玄界灘と限界オタ

インターネットで細々と生きています @toiharuka

パルプンテを唱えると絶対に巨大化してしまうのでオフ大会出れなくなりました

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皆さんは勇者のコマンドを使うとき、パルプンテが出たらどうしますか?

僕は絶対に選ぶ派です。ラストストックでメガンテが出ても、場外アストロンが出ても、次にパルプンテが出たら絶対に選びます。選ばなくてはいけない、と感じているのです。こんな面白いコマンド、放置していいはずがありません。

 

でも、ある日から僕がパルプンテを唱えると絶対に巨大化するようになってしまいました。

 

それはオフ大会中の勝者側一回戦のことでした。

BO3の一戦目、両者ラストストック。対戦相手の方のガオガエンと僕の勇者が一進一退の攻防を繰り広げている最中に、僕はパルプンテのコマンドを見つけ、すぐさま唱えました。

僕の勇者は巨大化、うおーっという僕の掛け声と、うわーっという相手の方の叫び声が混ざりながら僕の横スマが50%のガオガエンを破壊しました。

一戦目が終わったときに相手の方は「いや、巨大化引かれたらそれはしょうがない!あっぱれだわ!」と朗らかに笑ってくれていました。なんとなく、ほっとしたのを覚えています。

二戦目でした。開幕からパルプンテが出てきたので、唱えました。巨大化しました。

僕も相手の方も、何が起こってるのかわからない、という感じでした。

がむしゃらにDAで飛び掛かり、下スマを振り回しました。ガオガエンのシールドはあっけなく割れて、フルホールドした横スマはあろうことか会心の一撃

「す、すごいこともあるもんすね」

復帰台の上で巨大化の消費時間を待ち続ける相手の方の顔は引きつっていました。

そして三回目のパルプンテを唱えて巨大化したとき、完全になにかがおかしいと確信しました。崖際の大部分をカバーする空前はガオガエンを台上に帰すことなく、二戦目を終了させました。後ろで対戦を見ていた方がすこしざわついていて、なんだこれ、すげえな、と画面を見つめていました。

相手の方は唖然としながら、「たいありでした」と一言呟いて、しばらくそのままぼうっとしていました。

 

勝者側二回戦、僕が開幕巨大化すると本格的に会場がざわつき始めました。画面から視線を外さずとも、後ろに人だかりができているのを感じられました。

そういえば、パルプンテの出てくる頻度も多い気がします。一度唱え損ねても、コマンドを一度か二度挟めばほとんど出てきました。そして、出てくるたびに唱えてそのたびに巨大化しました。

僕がすま村を覆う超巨大マダンテを放って二回戦は終了し、僕の対戦台とコントローラーに運営のチェックが入りました。

しかし、僕は勿論なんの細工も施してないですし、人の持ってきた持参台で対戦していただけです。結局なにも出てこずに終わりました。

昔、スマブラDXの大会で実際にチート行為が行われたことがあると聞いたことがあります。特定の台の4Pポートにコントローラーを繋いだ時だけピチューの能力が向上するというものだったそうです。

そのプレイヤーは勿論不正としてバレて処罰されたそうですが、僕の場合はあくまで運の傾きが壊れてしまっているだけなのです。そんなことは絶対にありえないと言えるような事象ではなく、細い細い一本の糸を歩くように、ただパルプンテを唱えるたびにたまたま巨大化を引いてしまっている、それだけでした。

 

そのあとも疑惑とも困惑ともつかないような視線が向けられたまま、僕は巨大化し、勝ち進んでいきました。上強、DA、下スマ、横スマ、横スマ、空前、空後、DA……。

 

何十何度目かもわからないシールドブレイクのあと、僕は溜めた横スマを放ちました。

優勝。全く実感はありませんでした。いつもなら歓声と熱気に溢れている会場が、混乱と溜息で満ちていたからでしょうか。形式程度で流れたささやかな拍手が救いでした。

帰宅した僕はツイッターを開いて驚きました。リプライ一覧に様々なツイートがメンションされていたのです。

「あれは不正ではないのか」

「本当に運だけなんですか?」

「Read:----」

タイムラインも荒れていて、その大半が僕に対して懐疑的な意見を述べるものでした。

それと同時に、本当にパルプンテで巨大化を引き続ける不正なんて可能なのか、という議論も活発に行われていました。機材に細工が行われていない以上、この話し合いに終わりが見えることはなさそうでした。

僕はもううんざりしてしまって、Twitterのアカウントを消しました。

 

そして別界隈のアカウントに引き籠って数か月経った頃、ついにスマブラ星人が襲来してきました。

あんなにニュースになったのでみなさんも知っているでしょう。スマブラ星人にスマブラで勝てなければ、地球は終わりです。

各国首脳は全世界から最上位プレイヤーを招集しました。

しかし、MkLeoのジョーカーも、ザクレイのロボットも、満を持して復活し全盛期レベルまでプレイを仕上げ切ったZeRoのシークですら、スマブラ星人には完敗しました。

Captain Zackの色仕掛けは結構いいところまでいったそうですが、スマブラ星人側が途中で「そもそも自分に生殖能力はない」と気づいてしまい、あえなく失敗したそうです。

 

最強の彼らが何故手も足も出なかったのか。

 

それはスマブラ星人がパルプンテを唱えると絶対に無敵化してしまうからです。

 

MkLeoも、ザクレイも、ZeRoも、軽快なBGMと共に虹色に輝き続けるスマブラ星人の勇者に為すすべなく破れていったのです。Zackは知りません。

そして、本当に最後の手段として、僕が呼ばれました。

二度としないと決めていたスマブラを再びプレイする。

世界を救うというのは十分な理由でした。

 

会場はホワイトハウスの中庭。

ドナルド・トランプ氏が神妙な顔つきで僕に語りかけました。

「先方は今回こちらが敗北すれば地球を滅ぼすと言っている。君が最後の頼みだ。よろしく頼む」

僕は頷き、スマブラ星人の待つ対戦台へと歩み寄りました。

宇宙VIPマッチルールで1スト時間無制限。試合開始。

開幕、僕とスマブラ星人は同時にパルプンテを唱え、片や巨大化、片や無敵化。

ドナルド・トランプ氏が「……本当にいたのか、Ultraman」と、少年のように呟いたのが忘れられません。

 

スマブラ星人の無敵化は予想通り非常に強力でした。こちらの攻撃はほぼ通りません。

巨大化の重量でなんとか吹っ飛ばされずにこらえているとはいえ、あちらの一方的な攻撃の前に瓦解するのは時間の問題でした。

「頼む、Ultraman......!」

ドナルド・トランプ氏の悲痛な叫びが聞こえたとき、僕は最後の賭けに出ました。

コマンドを開き、バイキルトを、そしてためるを選択。

崖際へ向かって走り、DAで追いかけてきたスマブラ星人の背後に緊急回避で回り込みました。

Ultraman、何を……!?」

崖際でDAの後隙を晒す、しかし無敵を纏っているスマブラ星人に、僕はまじん斬りを選択しました。

巨大化×バイキルト×ためる×まじん斬り

想像するだけでも恐ろしいような威力のまじん斬りを、スマブラ星人にむかってゆっくりと振り下ろしました。

勿論、スマブラ星人は無敵化しているのでこのまじん斬りを喰らっても痛くも痒くもありません。

しかし、いざ自分の晒した後隙にこの威力を当てられそうになると、さすがのスマブラ星人もひるむのではないか。Zackの誘惑が成功しかけた話を聞いた僕は、スマブラ星人のメンタルを攻撃してプレイをバグらせるしかないと考えました。

 

結果として、スマブラ星人は僕の超巨大まじん斬りにひるみ、反射的にシールドを張りました。

跳魚の音を聞いて、人差し指が勝手に曲がってしまうように。

無敵化したキャラクターにもシールド耐久値の概念は残っており、シールドを張り続けていれば小さく、攻撃を受けても小さくなります。

当然シールドはたやすく割られ、スマブラ星人の勇者はその場で跳ね上がりました。

僕が少し歩いて崖際から押し出してやるだけで、彼はそのまま落ちていきました。

隣をみると、スマブラ星人は頭を振り、肩をすくめたあと、消えていきました。

こうして、僕はウルトラマンとなったのです。

 

今でもスマブラは大好きですが、やっぱりオフ大会には出ないようにしています。

勿論、サブキャラを使えば僕は巨大化できません。ほかの人と同じ条件で戦えるでしょう。

でもいざ戦うとなると、やっぱり負けたくないなあと勇者でパルプンテを唱えてしまうので、この負けん気が収まるまでは出れないなぁ、と思うのです。